地磁気 ( Geomagnet )

地磁気とは地球の持つ磁気とそれによって生じる磁場の総称である。 コンパスの針が南北を指すのが地磁気のせいであることは、 誰でも知っていることであり、 このように地磁気はわれわれに馴染みのある存在であるといえる。 しかし、なぜコンパスの針が南北を指すのか? という問いに対して地球自体が巨大な磁石であるからだ。と答えることができても、 なぜ地球が磁石であるのか?と聞かれるとその返答に困るに違いない。 また一般的にはずっと一定であると思われている地磁気も、 実際には日々とどまることなく変化し続けているのである。 このように一見良く知られている地磁気も、 あまり一般には知られていない面がたくさんあり、 またいまだに解明されていない謎も少なくないのである。 今回は地磁気のあまり知られていない側面、 および地球が巨大な磁石となりうる理由について簡単に説明する。

1:地磁気永年変化

先に述べたように一見、一定不変の地磁気は常に変化している。 変化するものとして磁極と磁力の2つが挙げられる。 磁極については南北磁極点ともに南極、 及び北極点にそれぞれあるのではというイメージが強いが、 実際はともにずれており、 北磁極が約北緯73゜西経98゜南磁極が約南緯70゜東経145゜に存在する。 さらに両磁極ともに数十年またはそれ以上のタイムスケールで変化している。 (表1参照)次に磁力であるがこちらの方も常に変化している。 例えばロンドンにおいては、 ここ数十年で磁力が0.17〜0.19ガウスぐらいの間で、 常に変化していることが測定されている。 このように地磁気は一定ではなく常に変化している。 このことを地磁気永年変化と呼んでいる。

北磁極 南磁極
       北緯     西経        南緯     東経

  1859  70゜05′  96゜46′

  1904  70゜30′  96゜30′

  1948  73゜00′  100゜00′

  1960  74゜54′  101゜00′

  1975  76゜12′  100゜00′

  1842  74゜00′  150゜00′

  1912  71゜10′  150゜45′

  1952  68゜42′  143゜00′

  1960  67゜06′  142゜42′

  1975  65゜48′  139゜18′

表1.北磁極と南磁極

2:地磁気の反転

先程地磁気永年変化について述べたが、 それ以上にスケールの大きな信じられないような変化が存在する。 それは地磁気の反転である。 地磁気の反転とは磁石である地球のN極S極とが入れ替わることである。 なぜこのことが分かったのかというと、岩石の自然残留磁気の測定によってである。 ある噴火によってマグマが吹き出したとすると、 マグマは流体中にはその場所における地球磁場の方向に帯磁することが知られている。 その後マグマが冷えると、 固まって岩石となり地磁気に沿った方向に帯磁したままになっている。 この後に外部から磁化をかけてももはや変化しないので、 その岩石が移動されない限り、その岩石の持つ自然残留磁気は、 噴火当時の地磁気の方向を示すことになる。 つまり、岩石の年代及び自然残留磁化の測定によって過去の地磁気が分かるのである。 この方法によって過去7600万年の間に171回の方向反転があり、 最も新しい反転は約70万年であったと推測されている。 では「なぜこのような反転が起こるのか?」という問いに対しては、 明確な回答はまだ無いというのが現状である。

3:なぜ地球は磁石となりうるのか?

この問いに対してはいくつかの説があるが未だ完全な理論は存在しない。 そこで代表的なものをいくつか紹介する。

  1. 地磁気原因説
  2. 地球自体が残留磁気を保持しているという永久磁石説。 しかし、最近の地球熱学によって明らかなように、 地球内部の温度は深さとともに上昇し、 上部マントルにおいても摂氏1000度を越えると考えられている。 一般に岩石磁気のキュリー点は摂氏数百度であり、 それ以上の高温において岩石は強磁性であり得ない。 したがって、地球内部の強磁性の存在しうる範囲は地表にきわめて近い部分だけとなり、 この部分だけの帯磁で地球磁場全体を説明するのは無理があるとされている。

  3. 巨大回転体説
  4. 回転体には必ず磁場が伴う。 しかしながら、普通のサイズの物体において、 その磁場は非常に小さく観測にかからないほどである。 ところが、物体が天体的スケールの回転体となったとき大きな磁場が現れ、 地球もこの仕組みによって巨大な磁石となっているという考えである。 この説の証明のために太陽などの大きな天体の測定が行われたが、 結局この説を裏付ける満足な結果は得られず現在ではあまり注目されていない。

  5. ダイナモ説

地球内部に東から西へ電流が流れているとすると、 その作用で南北方向に磁場が生じる。 このままであると電流は抵抗のためにジュール熱に変換され、次第に減衰する。 このようになってしまうといずれ磁場は消滅してしまい、 地球の永久磁石性が説明できないのであるが、 ダイナモ説によれば抵抗による減衰を発電作用 ( dynamo action ) によって補い、 この矛盾を解決している。 ダイナモ作用というものはイメージしにくいものであるが、 ここでは円盤ダイナモモデルを用いて簡単に説明する。

図.円盤ダイナモモデル

このモデルでは、金属の円盤が軸の周りを回転するようになっていて、 その円盤の縁にはブラッシュがあり円盤から電気を取り出せるようになっている。 このブラッシュからは円形コイルを経て、 再び軸に接するひと続きの電流回路が作られている。 軸方向に磁場がある場合を考えると、 円盤の回転に伴って円盤に起電力が誘起され、軸と円盤外縁との間に電位差ができる。 したがってブラッシュを通じてコイルに電流が流れ、 この円形電流は円盤の位置にはじめに与えられた磁場と同一の方向の磁場を発生する。 円盤の回転角速度ωが適当な値をとるときは、 電流のつくる磁場の大きさははじめに与えた磁場の大きさに等しくなり、 磁場はいつまでも維持されることになる。 つまりコイル中の電気抵抗Rによる損失を補うように、 運動エネルギーが電磁気エネルギーに変換されるのである。 このような状態を自励ダイナモと呼ぶ。 これと同じようなことが深さ2900キロメートルより深い部分にある核と呼ばれる部分 (主として溶融状態の鉄からなる) の回転によって起こっているとするのがダイナモ説である。 ダイナモ説は数ある説の中で最も有力とされている。

4:最後に

地磁気の説明をしてきたわけであるが、ページの都合上、 このあたりで終わりとしたい。 まだまだ不十分なものとは思うが、 さらに興味のある人は自分で地磁気関係の本を読まれたらどうだろうか。 また、質問等があれば遠慮なくメールを送っていただけたら幸いです。

追記
日本付近での地磁気の強さは
水平線分が0.3G(ガウス)または30000nT(ナノテスラ)くらい
鉛直成分が0.35Gまたは35000nTくらい
気象庁地磁気観測所 京大地磁気世界資料解析センターに詳しい説明があります.