磁気円二色性

(Magnetic Circular Dichroism : MCD)


 磁気円二色性とは,磁性体の左円偏光と右円偏光に対する吸収係数の差 として観測される.ここでは,光の進行方向に対する電場ベクトルの向が 反時計回りであるときを左円偏光と定義する.


 光と磁気は物質を介して結びついており,広い意味での磁気光学効果と 呼ばれている.このような作用のうち,物質の磁気的性質が光の偏り(偏光) に及ぼす作用を狭い意味での磁気光学効果と呼び,磁気円二色性もこのうち に含まれる.磁気光学効果は現象論的には誘電率テンソルの非対角成分から 生じると説明されているが,量子論的には電子状態間での光学遷移として 記述され,磁性の起因となっている局所的なスピン・電子状態の情報を得る 手段として広く用いられている.
 物質に特定のエネルギーを持つ光を照射すると,光と電子の間の多重極相互作用 により,そのエネルギーに応じて内殻電子は光を吸収し,非占有状態へ励起される. この特定のエネルギーを吸収端エネルギーといい,元素や電子殻 (K,L,M)により選択可能であり,独立な情報を 得ることができるという利点ある.また,この電子系の2つの状態間の遷移は, 遷移行列要素が0にならないときのみ可能となり,これを満たす量子数の条件を 選択則という.多くの場合,光による電子の励起は主に電気双極子遷移によるもの と考えてよく,全軌道角運動量Lの基底状態と励起状態との差をΔL とすると,双極子遷移選択則として
ΔL=±1
が与えられる.円偏光の場合,光の電場ベクトルが量子化軸方向(z方向) に垂直な面内(xまたはy方向)を向いており,全軌道角運動量Lのz成分 Lzの基底状態と励起状態の差 ΔLz=±1のときに遷移が起こる.つまり, +1(−1)の角運動量を持つ左(右)円偏光により,ある基底状態にいた電子は 軌道角運動量のz成分Lzが+1(−1)だけ 異なる状態へ励起され,角運動量に敏感な情報を得ることができる. したがって,遷移確率や励起状態の分布関数に不均衡があったり,エネルギーに 差が起こる場合に吸収係数に差が生じ,磁気円二色性が観測される.


−磁気円二色性−

 磁性体の左円偏光と右円偏光に対する吸収係数の相違

<特長>


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