Magnet-Optical Effect

磁気光学効果

磁気光学効果とは、名前から見てとれるように,「光」と「磁気」についての現象です. 光は真空中では磁気(静磁場)によって影響は受けないのですが,物質中や物質の表面で 反射された光は,磁気(物質中の磁束)の影響を受けることが知られています. このことより,光と磁気が物質を通して結びついていると言えます. このように,物質の持つ「光と磁気を結びつける作用」を磁気光学効果といいます.

このような「光と磁気を結びつける作用」のうちで,物質の磁気的性質が光の偏り(偏光という) に及ぼす作用には「ファラデー効果」や「磁気カー効果」などと呼ばれる現象があります. 物理学でいう磁気光学効果とは,一般的にこれらの(ファラデーやカーなどの)効果を意味します.

磁気光学効果が発見されたのは1845年で,イギリスの科学者ファラデーによるものでした. ファラデーは,「磁場をかけた鉛ガラスを通過した光の偏光面が回転する」ということを発見しました. また1876年にはイギリスの科学者カーによって,「磁性体(簡単に言うと磁石)によって反射された光にも, ファラデー効果と同じような偏光面の回転が起こる」ことが報告されています.その他の主な磁気光学効果は, 1800年代にすべて発見されました.

ここからは磁気光学効果の定性的な説明に入ります.

ファラデー効果

ガラス棒(非磁性)にコイルを巻いて電流を流すと,ビオ・サバールの法則によりガラス棒の長手方向に磁場が生じます. このとき,ガラス棒に直線偏光を通すと磁場の強さと共に光の偏光面が回転します.これを発見したのがファラデーで, それにちなんでファラデー効果と呼んでいます.ファラデー効果において, 光の進行方向と磁場とが同一直線上にある場合をファラデー配置, 光の進行方向と磁場の向きが直交するような場合をフォークト配置といいます.

コイルに(左の線を正として)電流を流すと, ガラス棒(水色)の長手方向に磁場(黄緑色)が生じる.
磁場と光の進行方向が同一直線上にある場合をファラデー配置, 磁場と光の進行方向が直交する
ような場合をフォークト配置という.

また,磁場によって偏光面が回転した角度(磁気旋光角)をファラデー回転角といいます. 加えている磁場が小さいとき,ファラデー回転角は試料の厚さlと磁場の大きさHに比例します.

 (ファラデー回転角) = VlH

上式において,Vはベルデ定数と呼ばれ,物質固有の比例係数です. また,ファラデー効果は磁場を反転すると逆方向に回転がおこります.

光が左手前から進み試料を通過するとき, 光が通過する前の偏向面に対して回転する.
これをファラデー効果という.

次に,ガラス棒ではなく鉄のように磁石によくくっつく磁性体(強磁性体)にするとどうでしょうか? 強磁性体の場合は,はじめから磁性をもっていますので,コイルを用意しなくても自分の持つ磁場(磁化という)により, 通過する光の偏光面が回転する,つまり,ファラデー効果がおこります. このファラデー効果と光の偏光を利用した「偏光顕微鏡」を使用して強磁性体の薄い膜(薄膜)を観察することができます. 下の白と黒とのストライプは,薄い磁石を偏光顕微鏡で観察したものです.薄膜に直線偏光の光をあてて通過させると, 光は強磁性体の磁化の影響を受けて,通過後の光の偏光面は通過前のその偏光面の方向から回転します. 異なる磁化(NとS)の領域を光が通過するとき,光の偏光面の回転する方向が違うので, Nにより偏光面が回転した光を通過するフィルタ(アナライザという)を用いると, Nの部分が白く,Sの部分が黒く見えます.外部から磁場を加えると,その影響を受けて白と黒の部分が変化します. しかし,ファラデー効果を利用するためには,光が通過できる薄い膜のようなものである必要があります.

偏向顕微鏡で観察したビスマスを
含んだ強磁性体薄膜の磁区構造.
ビスマスを添加することにより,
ファラデー回転角が大幅に増加する.

磁気カー効果

一般に,物質に直線偏光の光を斜めに入射すると反射光は楕円偏光になり,その主軸方向が入射光の偏光方向から回転します. この現象を利用することにより,物質の屈折率や薄い膜の膜厚を決めたりすることができます. (このような現象は,等方性の物質に光を垂直に入射した場合にはおこりません.) ところが,物質が磁化をもっていると,挑戦偏光の光が入射したとき, 主軸の向きが入射直線偏光の向きから傾いた楕円偏光が反射してきます. これを,磁気カー効果といい,磁気カー効果は,反射光に対するファラデー効果といえます.

磁気カー効果は,強磁性体(強い磁石)やフェリ磁性体(やや強い磁石)のように巨視的に磁化を持つ物質においてのみ, 観測することができ,金属のように光が透過しない物質において利用しています.

強磁性体などの試料を観測する磁気カー効果には,以下に示す3種類のものがあります.

極カー効果
反射面の法線方向に平行に試料の磁化がある場合に利用します
縦カー効果(子午線カー効果ともいう)
試料の磁化が反射面内にあって,かつ,入射面に含まれる場合利用します
横カー効果(赤道カー効果ともいう)
試料の磁化が反射面内にあって,かつ,入射面に含まれる場合に利用します

極カー効果の試料配置 縦カー効果の試料配置 横カー効果の試料配置